愛シテアゲル
「小鳥、ついに二十歳だな。おめでとう」
改めての言葉に小鳥も背筋が伸び、座っている姿勢を正した。
「ありがとう。お父さん」
「今日はサークルで祝ってくれるんだな。では、家族での祝いは次の週末にしておくか。いいな、琴子」
キッチンで小鳥の紅茶を入れてくれている眼鏡の母がにっこり微笑む。
「そうね。お祖母ちゃんも楽しみにしていたわよ。みんな、何が食べたい」
末っ子の玲児が開口一番、元気よく答える。
「お祖母ちゃんのバラ寿司」
「俺も、祖母ちゃんのバラ寿司、食いたい」
そして小鳥も。
「私も、お祖母ちゃんのバラ寿司大好き。あとね、お母さんのビーフシチュー」
弟たちも『いいね』、『いいな。俺も母ちゃんのビーフシチュー』と同調してくれ、やはり三姉弟、子供の頃から食べてきたものが一緒で、好物も揃ってしまう。
琴子母も嬉しそうに『はいはい』と受け答えてくれる。そんな子供達と母親を見て、英児父も笑っている。だがまた英児父が険しい顔つきになる。
「話はまだ終わっていない」
いつもは誰よりもおおらかで豪快な父ちゃんが、ここぞという時に見せる顔だと誰もが気がつき、お喋りを止める。