愛シテアゲル
「じゃあ。とにかく、ドラッグストアで片っ端からベビー用品を買いに行ってくる」
効率的にできないなら、非効率でも良い。とにかく行動をすると翔がいきりたった。
そんな彼を見て、小鳥も一生懸命になってなにか良い方法がないか考えた。そして――。小鳥は自分のスマートフォンをデニムパンツのポケットから取りだし、赤ちゃんを抱いたまま電話をしてしまう。
「小鳥?」
「おなじお母さんなら、うちのお母さんでも良いよね」
翔が戸惑った顔をする。それもそうか。上司の奥さんにこの状態を知られることになるのだから。しかも娘が部屋に来ているだなんて。
「どちらかというと、桧垣のお母さんより、うちのお母さんの方が、お兄ちゃんと瞳子さんの事情は知っていると思うんだよね」
男の子はまったく近況を教えてくれない。琴子母が時々そう言う。そして英児父は『男はそんなもんだ』とも言っていた。だから翔兄もきっと、瞳子さんは紹介していても、何故どうして別れたかなどは男として、特に母親には言えていないはず。
それよりかは、彼の日常を間近で見ている『親父さんとオカミさん』の方がまだ事情を把握している。そう思ったのだ。
そして翔も、小鳥の決断に戸惑いはあっても、それは確かだと納得してくれたのかもう止めはしなかった。