愛シテアゲル


「だけど、俺。彼女はまったく変わっていないと思いました。見合い結婚でも望んだ結婚だったはずなのに『こんなはずじゃなかった』と言い並べた不満が、俺との最後の別れ話の時とそっくりで……。どんな男が相手でも同じだったんじゃないかと」

「そうか。てことは、瞳子さんも変わり時だな。これ乗り越えないと、彼女が痛い目に遭うだけだ。いつまでも姫様思考なら、毎日が苦しいだけだ。翔、前の女だからってここで甘やかすなよ」

「勿論です」

「安心したわ。ヨリを戻すとかは思っていなかったけれどよ。お前、よく考えてみろよ。恋人ではなくなっても、大学時代のサークル仲間という繋がりがまだあるんだろ。その昔馴染みだからという良心で、泣きついてきた女を情けで一晩でも泊めてみろ。人妻だぞ。夫側にばれたら潔白でも、いまのご時世では訴えられるぞ。そういう巻き込まれなくても良いトラブルで痛い目にあって欲しくないんだよ」

 それを聞いただけで小鳥は血の気が引いた。大人の事情はそんなふうに発展するものなのだと。これって翔兄にとってもの凄く危ないトラブルの元だったんだとゾッとした。やっぱり英児父に知っておいてもらって正解だったかもしれない。



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