愛シテアゲル
「父ちゃん。私、瞳子さんを探しに行ってくる。やっぱりダメだよ。放っておいたら」
「そうだな。女一人、この港町を徒歩でうろついているのは危ないな。だけれど、お前も危ない。エンゼルが狙われたんだ、俺が行ってくる」
「そんなの、怖くないよ。見つけたら今度はとっつかまえてやるんだから!」
「うっせい、黙れ! お前みたいな子供がよう、どうこうできる相手じゃねえんだよ」
本気の声で怒鳴られ、小鳥も震え上がる。父が絶対命令を下す時の怒声だった。
「行ってくるわ、翔。赤ん坊は、ベッドとかソファーとか高いところに寝かせるな。寝返りするから目を離した隙に落っこちるぞ。柔らかいタオルケットを敷いて寝かせてやれ」
「はい……」
父がスカイラインのキーを手にした時だった。またチャイムが鳴る。
瞳子さんが、帰ってきたかも!? 揃ってそう思ったのか、三人とも玄関へ向かっていく。そしてまた翔がドアを開けると。
「そこで、うろうろしていたのよ」
開けたドアには、スーツ姿の琴子母と泣き崩れる瞳子さんだった。
「琴子、お前、仕事は」
「あんな電話をもらって平気で仕事なんてできないわよ。三代目が『戻ってくるなら少しだけ出て行っても良い』と言ってくれたから来てみたの」
琴子母がこのマンションに着くと、瞳子さんがエントランスでうろうろしていたのだとか。
「よかった。瞳子さん。ほら、いいからはいんな」
久しぶりに会う英児父に促され、彼女が力無く玄関に入った。