もう春は来ない


 その時から、僕らの春は、春ではなくなった。

 その時目で追っていたサクラの花びらが、突然色を失って。

 僕の斜め後ろの席で、

「嘘だろ?センセ、何かの間違いだって!昨日アイツ…や、山下、弟と楽しそうに笑ってたんだって!ホント、楽しそうだったんだって!」


 そう叫ぶ声だけが、僕の耳に届いていた。








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