もう春は来ない


 あの日――

 すぐに逃げるように教室から出て行ったあの女子は、二度と教室に帰ってくることはなかった。

 事件の矢面に立つことを恐れ、家族ごと引越しし転校していった。


 一緒に山下小春を虐めていた女子3名は、親に付き添われ、それぞれが山下のうちに謝罪に行き。

 そして、この2年間、ソイツらは毎日、山下小春の机と椅子を丁寧に拭いた。

 誰よりも早く登校して。


 そんな彼女らを見て、もう誰も責め立てることはしなくなった。

 きっと、ソイツらは、もう誰が責めなくても、自分自身が、自分をいいだけ責め続けている。



 僕らは、そう思えるようになった。

 今、僕らはソイツらの今の気持ちがわかるようになった。



 だって、

 僕らも、彼女たちと同罪なのだから。



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