もう春は来ない


 僕らは山下の死後、すぐに話し合った。


 マスコミや教育員会の対応に明け暮れて、僕らを置き去りにしたままの担任を当てにすることなく、毎日毎日、ホームルームの時間、自主的にイジメに向き合った。


 山下を苦しめていた、残された女子たちが皆の前で涙を流して謝罪もした。

 いつも熱いアイツが中心になって、もう二度と、山下小春のように苦しむ仲間を作らないと、誓い合ったんだ。


 その成果もあり、男子にもあったフザケに似たイジメもなくなった。


「俺はホントは、毎日傷ついてたんだ……」


 何度、問いただしても「イジメじゃない」と、いつも笑っていたソイツがそう言葉にしたことで、僕らは、すべて解決した、と、そう思っていた。



 これで、キミも心が救われる……、僕らは、そう信じていた。

 そして、


 僕らは、普通の日常を取り戻していった。





 色のない毎日を……。

 本当の罪悪感を抱えながら。


 本当の罪悪感から逃げていることに、誰もが気づきながら。



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