女王の密戯
「私がこのような素晴らしい賞を戴けたのも、ハリウッドに進出出来たのも全てこんな私を支えてくれる沢山の方がいて下さるお陰です。普段はこんな、という言葉は使わないように心掛けているのですがこういった時は使わずにはいられませまん。そして今、私の胸の中には『感謝』という想いしかありません」

紅華は目線を会場中に向け、憂いを含んだ声で告げた。その瞳にはうっすらと涙さえ浮かんでいる。

「素晴らしい賞を四度も戴けたのも、今、私がこの場にこうして立っているのも、全て皆様のお陰です。本当にありがとうございました」

紅華が深く頭を下げると会場で拍手が湧いた。紅華はそれに頭を上げ、満面の笑みを向ける。

その笑みはこの世で一番美しいとしか思えないものだ。美の女神。まさにその一言に尽きる程の美しさをしたのが米澤紅華という女優だった。

「本当に、本当にありがとうございます」

紅華は少しハスキーな色気のある声で言い、もう一度深く頭を下げた。
会場内にはまだ大きな拍手が響いている。

紅華はその歓声と拍手の渦の中で麗し過ぎる微笑を浮かべた。






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