女王の密戯
「お勧めの店があるんですが、宜しければそちらでお話ししません?」

紅華は艶やかに彩った唇を動かしながら言った。
撮影が終った建物内は撮影中よりも騒がしく思える。撮影中よりも片付けの方が大変。そういった様子で先程の理子も髪をきちんと束ねて右へ左へと動いている。

「ええ、是非」

茶田が答える隣では三浦が訝しげな顔をしている。
それもそうだろう、たかが聴取を何処かの店でやることは滅多にない。それもこちらが提示した店ではなく、相手が提示した店で。

「少し離れているので、タクシーで行きましょう」

「いえ、よければ我々の車で。道を教えて頂けますか?」

茶田の言葉に紅華は勿論、と頷いた。
妖艶というか、何とも魅惑的な笑みだ。






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