女王の密戯
「捜査が無事終わったら三人で食事に行こう」

茶田がそう言うと由依は悲しそうな表情をした。遠回しに二人で食事に行くことはないと言われていることに気付いたのだろう。しかしそれは今に始まったことではない。
以前から何度となく由依が茶田を食事に誘っても茶田はそれに応えたことはなかった。

「駄目ですよ。二人で、て話じゃないですか」

何処と無く話が纏まりそうだったにも関わらずそれに水を差したのは三浦だった。
また余計なことを。
茶田は二人に聞こえないように舌打ちをした。

「ちょっと来い」

茶田は三浦の首にぐるぐると巻かれたマフラーを引っ張りながら由依から離れた。数歩移動したところで三浦は何ですか、と抗議の声をあげる。

「お前、あいつのこと好きなんだろ?」

茶田は由依に聞こえない程度の声で三浦に訊いた。すると三浦は顔を真っ赤にしてから首を横に振る。

「そ……そんなことないっすよ」

何を今更、と呆れてしまう。
あれだけ態度に出しておいて自覚がない、若しくは隠しているつもりなのだとしたらこの男は刑事に向かないだろう。茶田は慌てふためく三浦を見ながら溜め息を吐いた。

「そんなことあるだろ」

茶田の言葉に三浦は顔を赤く染めたまま小さく頷いた。その表情はまるで隠し事がばれてしまった少年のようだ。

「だったら、何で俺にせっつかす」

茶田は大きく息を吐いてからそう言った。
普通、好きなら誰かと付き合って欲しいなどと思うはずがない。


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