女王の密戯
「自分があいつと付き合えばいいだろ」

茶田は声に少しの苛つきを含ませて言った。どんなに冷たくあしらっても由依が茶田を諦めないのは三浦がこうした行動を取るせいだろう。

「……それは出来ないんで、せめて茶田さんと付き合ってもらえたらな、と」

三浦はごもごもと聞き取りづらい声で答えた。

「何で出来ないんだよ」

茶田が訊くと三浦はそれは……、と言葉を濁した。らしくない。三浦はいつも言いたいことははっきりと言うタイプでこんなふうに言葉を濁すのを見たことはなかった。

「絶対茶田さんには理解出来ないんでいいっす」

三浦は顔をそっぽに向けた。まるで拗ねた子供。そのことからその理由は大したものではないと推測出来るが気になることに変わりはない。

「お前にどんな理由があってあいつと付き合えないのかは知らないけど、だとしても俺があいつと付き合うことはない」

茶田はきっぱりと三浦に言い切った。すると三浦は何でですか、と非常に情けない声をあげた。
そんな声を男が出すな。
今のような声を聞いたとき、そう告げた過去を思い出す。すると彼は更に情けない声をあげ、仕舞いには泣き出したがそれは三浦ではない。

「タイプじゃない。それだけだ」

茶田が答えると三浦は納得出来ない、といった表情をした。
確かにそれは半分嘘だが、半分は本当だ。由依のことは本当にタイプではないのだが、付き合えない理由はそれではない。


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