女王の密戯
「帳場も向こうに立てればいいと思いませんか?」

運転をしながら三浦がぼやいた。確かに、と茶田も窓の外を眺めながらそれに同意した。
大城が殺されたのは八王子なので、そこに帳場が立つのは通常のことだ。だが、大城が住んでいるのも働いているのも都心。だとすると八王子で聴き込みをするのは無駄な行為に近いし、何より茶田達の担当はそれではない。

だとすると毎日こうして捜査会議に出る為だけに八王子に赴き、捜査の為に都心へと移動することになる。毎朝毎晩八王子に来ることが面倒なら所轄に寝泊まりすればいいのだが茶田はそれだけは嫌だった。

満足にシャワーを浴びることも出来なければ、満足に寝ることも出来ないし、何より一人になる時間がなくなる。そして三浦もそれと同じ考えらしく、彼も事件が起きてもその所轄に寝泊まりすることはなかった。

だが由依だけは意外にも女子寮に泊まっているらしくそんな不満はないようだ。

車内で軽い朝食を済ませ、三浦の運転する車が一刻も早く目的地に着くことを願った。狭い車内で三人、特に会話が盛り上がることはない。






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