女王の密戯
「何が必要になるかはまだわかりません」

茶田は公佳から紙コップを受け取りながらそう返した。中身は緑茶らしく、淡く透き通った緑色が美しい。

「犯人の目星は?」

紅華も公佳から紙コップを受け取っている。

「無能さを晒すようですが、全く」

茶田は答えた後、紙コップに口をつけた。緑茶は程好い温度で淹れられている為、熱過ぎるということはなかった。

「早く見付けて下さいね。でないと恐ろしくて」

紅華はそう言ってから身震いする振りをした。その仕草は何処か悪戯っぽく、可愛らしい。

「ええ、一刻も早く見付けてみせますよ」

茶田は答えた後、口角を持ち上げた。
冷たい空気に春の気配は少しも含まれていない。このぶんでは桜の開花も存分にいかないだろう。







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