女王の密戯
「犯人は川幡梨花子を二回刺した後、その傷口から血を絞り出している。恐らく、傷口の周りを押して、出血を促した。そしてその後、傷口に手を入れ更に出血させた。これらのことから犯行時間は相当かかったものと思われる」

係長は生野の質問に答えながらホワイトに遺体の写真を貼り付けた。それは傷口をアップに写したもので開いた肉は人間の一部には思えなかった。
また、惨いことを。
茶田はその写真に目を向けながらそう思った。それと同時に違和感を抱く。大城のときと違い過ぎるのだ。

大城は撲殺でそこから狂気染みたものを感じ取ることは出来なかった。だが今回の事件は違う。そこにあるのは確かに「狂気」だと思えるのだ。

「前回の大城殺しとは別線で捜査していく」

響き渡る低い声に茶田はだろうな、と思った。これだけのことで同一犯と見る者はまずいないだろう。殺害方法だけ見れば確実に違う人間の犯行にしか見えないから。

それでも、と茶田は手の中でボールペンを弄んだ。それでもこれだけの共通点は同一犯だと示しているようにしか見えなかった。







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