女王の密戯
「……彼女からお話を聞くことは可能ですかね」
茶田は隣で腕を組んで立つ和田に尋ねた。すると和田は腕時計に目をやってから、そうですね、と口を開いた。
「もう少しで休憩を挟むはずなんで、聞けると思いますよ」
不意に違和感を覚える。
茶田はそれの正体を掴む為に撮影所内を見渡した。予想外の出来事に慌てふためくスタッフ達に、少々の苛立ちを見せている俳優達もいる。近くでは何やら携帯電話を耳に当て、必死に頭を下げる背広姿の者。
そうだ。
このなかには梨花子の死を悼んだり哀しんだりしている者がいないのだ。人が一人殺されたというのに此処にいる人間達の関心は撮影の進み具合でしかない。
「川幡さんが殺されたこと、どうお思いです?」
茶田は小さめの声で和田に訊いた。すると和田は一度瞬きをしてから小さく息を吐き、答えた。
「可哀想だと思いますよ? それに、映画の話題作りになってしまった。勿論、悪い意味で」
和田の答えに茶田は軽く目を剥いた。
「悲しかったり、犯人を憎む気持ちは?」
茶田が質問を続けると和田はううん、と首を捻った。
「だって、特別親しかったわけでもないし。刑事さん、同じ職場の大して親しくない人が殺されて、悲しかったり犯人を憎んだりします?」
その言葉に軽い怒りを見せたのは茶田ではなく三浦だった。三浦は和田の目の前に立ち、彼を思い切り睨んでいる。咄嗟の怒りでも手を出さないということは、三浦は茶田が思っている以上に冷静な人間のようだ。
茶田は隣で腕を組んで立つ和田に尋ねた。すると和田は腕時計に目をやってから、そうですね、と口を開いた。
「もう少しで休憩を挟むはずなんで、聞けると思いますよ」
不意に違和感を覚える。
茶田はそれの正体を掴む為に撮影所内を見渡した。予想外の出来事に慌てふためくスタッフ達に、少々の苛立ちを見せている俳優達もいる。近くでは何やら携帯電話を耳に当て、必死に頭を下げる背広姿の者。
そうだ。
このなかには梨花子の死を悼んだり哀しんだりしている者がいないのだ。人が一人殺されたというのに此処にいる人間達の関心は撮影の進み具合でしかない。
「川幡さんが殺されたこと、どうお思いです?」
茶田は小さめの声で和田に訊いた。すると和田は一度瞬きをしてから小さく息を吐き、答えた。
「可哀想だと思いますよ? それに、映画の話題作りになってしまった。勿論、悪い意味で」
和田の答えに茶田は軽く目を剥いた。
「悲しかったり、犯人を憎む気持ちは?」
茶田が質問を続けると和田はううん、と首を捻った。
「だって、特別親しかったわけでもないし。刑事さん、同じ職場の大して親しくない人が殺されて、悲しかったり犯人を憎んだりします?」
その言葉に軽い怒りを見せたのは茶田ではなく三浦だった。三浦は和田の目の前に立ち、彼を思い切り睨んでいる。咄嗟の怒りでも手を出さないということは、三浦は茶田が思っている以上に冷静な人間のようだ。