女王の密戯
「例え親しくなくとも、一緒に仕事をしてきた人でしょう」

三浦は普段よりぐっと低い声で和田に迫った。その顔は目が鋭く、いつもの柔和な笑顔を浮かべる彼の面影は何処にもない。

「殺人犯を憎いと思うのは、それは貴方達が警察だからですよ。僕らみたいな一般人には所詮他人事、関わりのないことですからね」

それでも和田は胆が座っているようで三浦に怯むことなく答えた。

「だからって……」

尚も食って掛かろうとする三浦を茶田は手で制した。
和田の言うことは尤もだ。自分達は警察官という職業柄、殺人犯に異様に執着しているのだろう。それを捕らえるのが己れに課せられ任務だから。
でも一般市民は違う。殆どの者が殺人というところかは当たり前だが縁遠いところにいて、それらは他人事でしかない。殺されたのが家族や友人であるならば話は別なのだろうが、ただの同僚と呼ばれる存在が殺されただけでいちいち全員が犯人探しに躍起になることはない。
これらは今までの捜査でも経験してきたことだった。

聴き込みに行った先の会社、学校。何処の者も被害者と親しい人間以外は皆和田のような反応をする。それを違和感だと思ったのは此処が閉鎖された空間だからだろう。
映画撮影という閉鎖された空間。だから、此処にいる人間は皆密接な関係だと思い込んでしまっただけ。和田は別に自分達に怒鳴られるような発言は何一つとしてしていない。

三浦は茶田の制止にぐ、と下唇を噛みながら身を引いた。その瞬間、中里の声で三十分休憩、と聞こえた。









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