女王の密戯
甲州街道に近い道は朝だというのに車通りはかなりある。ひっきりなしに、とまではいかないが車が途切れることはない。
こんななかで交通整理をしたら嘸や(さぞや)点数が稼げることだろう。実際、そんなことをしたことはないのだがただ何と無くそう思った。
「で、茶田さん達の仕事は何ですか?」
由依は三浦の手のなかにある缶コーヒーを見詰めながら言った。余程寒いのかそれは無意識らしく、スカートから出た薄いタイツを履いた脚は微かに震えている。
「あ、よかったら」
見られている缶コーヒーに気付いたらしい三浦がそれを由依の前に素早く差し出した。すると由依はぱあ、と表情を明るくし、いいんですか、と見た目のわりに少し低い声で言った。
「はい。甘いの駄目じゃなければ」
茶田はコーヒーを飲むときいつもブラックなのだが三浦はそれとは反対にカフェオレなど甘いものを選ぶ。ブラック派の茶田からしてみれば口の中に広がる甘さを想像するだけで胸焼けがしそうなのだが三浦からしてみればブラックの方が胃が荒れそうだ、と以前言っていた。
「大好き。ありがとう」
その「大好き」は勿論「甘いの」に掛かるわけだが三浦はその言葉だけを脳に見事にピックアップしたようで、先程より顔を赤くした。それでも由依は気付かないらしく、嬉しそうに三浦から缶コーヒーを受け取っている。
若者二人の恋愛事情を傍観し、それを見て面白いなどと思ってしまう。自分もいよいよ中年の仲間入りか、などと真っ赤な顔をした三浦を見ながら茶田は心の中で笑った。
「俺達のやることはガイ者の身辺聴取だ」
美味しそうに缶コーヒーを飲む由依に茶田が告げる。すると由依は缶を唇につけたまま、茶田の方に視線を動かす。その動きはまるで動物のようで可愛いが、それを魅力的に感じることも、況してや女性として可愛いと思うこともない。
こんななかで交通整理をしたら嘸や(さぞや)点数が稼げることだろう。実際、そんなことをしたことはないのだがただ何と無くそう思った。
「で、茶田さん達の仕事は何ですか?」
由依は三浦の手のなかにある缶コーヒーを見詰めながら言った。余程寒いのかそれは無意識らしく、スカートから出た薄いタイツを履いた脚は微かに震えている。
「あ、よかったら」
見られている缶コーヒーに気付いたらしい三浦がそれを由依の前に素早く差し出した。すると由依はぱあ、と表情を明るくし、いいんですか、と見た目のわりに少し低い声で言った。
「はい。甘いの駄目じゃなければ」
茶田はコーヒーを飲むときいつもブラックなのだが三浦はそれとは反対にカフェオレなど甘いものを選ぶ。ブラック派の茶田からしてみれば口の中に広がる甘さを想像するだけで胸焼けがしそうなのだが三浦からしてみればブラックの方が胃が荒れそうだ、と以前言っていた。
「大好き。ありがとう」
その「大好き」は勿論「甘いの」に掛かるわけだが三浦はその言葉だけを脳に見事にピックアップしたようで、先程より顔を赤くした。それでも由依は気付かないらしく、嬉しそうに三浦から缶コーヒーを受け取っている。
若者二人の恋愛事情を傍観し、それを見て面白いなどと思ってしまう。自分もいよいよ中年の仲間入りか、などと真っ赤な顔をした三浦を見ながら茶田は心の中で笑った。
「俺達のやることはガイ者の身辺聴取だ」
美味しそうに缶コーヒーを飲む由依に茶田が告げる。すると由依は缶を唇につけたまま、茶田の方に視線を動かす。その動きはまるで動物のようで可愛いが、それを魅力的に感じることも、況してや女性として可愛いと思うこともない。