七番目の悪役



「わぁ~、黒姫様はすごいんだね!」

「うん!だって黒姫様だもの!」


絵本を眺めていた二人の子供が声を上げて喜ぶ。

その子供達には顔がなかった。のっぺらぼうのようにつるぴかで真っ白だった。
体もまだ色塗りがされてない絵のように真っ白であやふやだった。

この子供達はまだ"役"が決まっていない。
役が決まるとその役にあった顔や服装になるのだ。


となりの部屋では黒姫がこの子供達の"役"について執事役の人達と話し合っている。
それをこの子供達は今か今かと待っている。


ーギィ・・・


古びた扉がゆっくりと開いて執事役の人が機械的な声色で言った。


「ではそこの者こちらへ」


「え、私?」


「そうです。」


「で、でも・・・」


チラリともう一人の子供に目を横目で見る。てっきり二人一緒に行けると思った子供は離れたくないっというようにもう一人を見つめている。


その視線に気付いたもう一人が多分にこりと笑って優しい声で言った。


「大丈夫、またきっと会えるから」


「ほ、ほんとに・・・?」


「うん。だから待ってて?」


「わかった・・・待ってる!待ってるからね?」


「うん」


子供は名残惜しそうにしながらも執事役の人の後を追って向こうの部屋に消えて行った。




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