厄介な好奇心
 しかし、僕の意に反して畑山礼美の口調は恐縮したものであった。

「あのう、今頃連絡が来るなんて思ってもいなかったんですけど、いったい何の用事なんですか?」


 その言葉に、今度はこっちが恐縮してしまった。 
 ただの知り合い程度の人に何年も経って電話するなんて非常識だったのかも知れない。 

「大した用事とまではいかないんだけど、ちょっとお願い出来たらと思って」

 僕は仕方なしに挨拶もそこそこに本音を伝えた。 
 彼女は暫く黙り込んだ後に不思議な事を口にした。 
「今頃電話してくるなんて、貴方は私を強迫するつもりなんですよね?」

 強迫?いったい何の事なんだろうと思った。僕はただお願いしたいと言っただけなのに。
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