厄介な好奇心
 僕は、そのスキを見逃さなかった。すかさず彼女の左脇腹に回し蹴りを入れて体勢を崩させ、立ち直る前に横を通り抜け、思いっきり走り去る。 

 そのつもりだった・・・・ 

 しかし、僕の右足はいとも簡単に彼女の腕に捕まり、そればかりか軸足の左足を払われると、僕はみごとに宙に浮き、地面に落ちる短い間にみぞおちに肘打ちを打ち込まれた。 

 そのせいで受け身も何も出来ず、僕は、後頭部というか首筋から地面に叩きつけられた。 

「ウグッ・・・・」 

 みぞおちと首の付け根にダメージを受けたが、幸いにも意識は飛んでないようだ。 

「僕を殺したいのか?」

 ハッキリと出ない声で叫んだ。 

 彼女は、僕の頭の横に片膝をつくと、おもむろに左手で僕の首を掴んできた。 

「そうだよ。あんたには死んで貰うつもりだよ」

「なんで?なんで万引きを知られたくらいで。それも、もう昔の事じゃないか。手を離せよ」

 僕は、足で彼女の背中を蹴ろうとしたが、それはまるで届くことはなく、単にバタバタと子供がダダをこねるように暴れただけに過ぎなかった。

「万引き?何の話だよ、そりゃあ?」


「だって、手が勝手に動くって言ってたじゃないか」 

「そう、手は勝手に動いちゃうよねえ。子供の頃からそう訓練されてきたからね」

< 21 / 61 >

この作品をシェア

pagetop