厄介な好奇心
 おっちゃんは、そう言って踵を返すと、「よし」と独り言を残してスタコラサッサと部屋を出ていった。 
 僕の視線がおっちゃんの白いヒラヒラとした背中から女性の顔に移ると、半分呆れた表情で作り笑いを浮かべながら「いつもの事ですから」と言った。

「そうですか。いつもの事なんですか・・・・」

 女性は聞こえるか聞こえないか程度の声で「はい」とだけ答えた。と言っても、聞こえてはいるのだが。 
「僕、どうしたんですかね?」 

 そう聞くと、私も申し送りで聞いただけだからと言いながらも詳しく説明し始めた。それによると昨夜の九時過ぎ頃、街外れに架かる橋の脇にある階段の下で僕は倒れていたらしい。そこへちょうど通りかかった男女二名が僕に気付き声を掛けたが、意識が無いことに驚いてすぐに救急車を呼んだということだ。
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