厄介な好奇心
 仕方なく僕はオトリの役目を引き受け、チャペルの前で言われた通りの行動をする羽目になった。

 白いチャペルは間近に見ると更に小さく見え、ここで結婚式をあげるには不都合過ぎるのでは無いかと思える程で、レースのカ―テンの隙間から覗ける室内は、安っぽい喫茶店のような感じでカモフラージュされていた。 

 そうこうしているうちに、黒い車のドアが開く音が聞こえたかと思うと、これまた黒に纏われた男が僕のほうに歩き寄って来て、僕はその姿に棒立ちとなった。

「何か御用ですか?」

 ただの運転手だと思っていたのに、これじゃあ、まるで映画に出てくるSPじゃないか。

 つまり、とっ捕まりでもしたら確実に僕は殺されるって訳だ。

 じゃあ、ボーっとしてる暇は無い。とっとと逃げよう。僕は、あらんかぎりの瞬発力を出してダッシュした。 

「よ―、あんた」

 呼び止めたって無駄だ。僕は何処までも突っ走るんだから。 

「あの馬鹿。時間稼ぎも出来ないのか」

 オウム男のせいでこっちまでバタバタだ。とにかく、運転手が帰って来るまでに仕掛けないと。俺は、アルミ製のテープで車体の底にぐるぐる巻きにすると、横っ飛びをするかのように駐車場脇の草むらに飛び込んだ。
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