厄介な好奇心
「取り敢えずは事故と事件の両方で対応しますので、何か思い出したことでもあれば連絡下さい」

 男はそう言うと名刺を一枚出して僕に手渡した。 
 こいつ、きっと捜査なんかしないだろうな。単なる事故で片付けてサッサと次の仕事に移りたいのが見え見えで、こっちのほうが胸くそ悪くなる。
 
 男達が部屋を出るとすぐに名刺を半分に折り曲げ、部屋の壁に投げつけてやった。

 それにしても、いつも通って頭に刻み込まれている道。そんな所で僕は階段を踏み外すだろうか。

 酔っているならともかく、あの時は素面であった。それを考えるとどうも解せなくて、それでいてそれ以上の事が浮かばない現実に頭の中がモヤモヤとした。
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