腹黒年下くんの甘い罠。
「遊びだったんだね。ま、私はリアルでしかも年下なんかには全く興味なんてないけどね...。」
彩華先輩は強がっている。
平気そうに振る舞っているけど、全然平気そうじゃない。
目にいっぱい涙を浮かべて僕を睨んでいる。
「嘘つき。」
今までに見たことのない表情で彩華先輩はそう言って、その場から走り去って行った。
僕には彩華先輩を追いかける資格なんてない。
「あらら〜。桜ノ宮さんかわいそ〜。」
彩華先輩がいた場所を見つめ続ける僕に話しかけて来たのは海藤先輩。
「ゲーム終了?」
「.....。」
「黙んないでよぉ〜。つーか、睨むな〜。」
本気になるのが怖いんだ。
失うことが怖いんだ。
本気にさえならなければ、手に入らなくても辛くない。
ずっとそうやって自分を誤魔化して来た。
のに。
「彩華先輩....」
本気になんて絶対なっちゃいけない。
そう自分に言い聞かせて。