瞳の向こうへ
『彼女にメールしてるじゃん』

慌ててスマホをカバンに放り込んだ。

『親です』

『ウソだあ』

『本当です』

『もう、野球部の期待の星なんだからーー』

え?

翔……君?

「え?どうしたの……」

なぜ、翔君が私を抱きしめてるの?

ガードレールに身体全体が当たって痛いけど……いいにおいがする。

そんなにおいを感じる余裕もなく翔君の背後から猛スピードでバイクが走り去っていった。

全部は見えなかったけど、唯たちが出くわしたバイクに特徴が似てた。

翔君はバイクが立ち去るのを確認し路上に落ちてる私のカバンを拾いにいった。

『……ありがとう』

ヤバい……。

マジでヤバい……。

ドキドキしてヤバい。

『油断しないでください!俺は耳が聞こえないんですから』

手話が荒々しい。

翔君が怒ってる。

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