瞳の向こうへ
『ちょっと見ますよ』

俺にしたら化け物で近づきたくないが、一度見てみたいと思った。

字が綺麗なんだな相良先輩は。

性格が出るってよく言うけど、字綺麗な女の子は誰でもドキドキするに決まってるよ。

『続きやります』

相良先輩がペンを取り損ねて手を滑らせ、問題用紙の端っこを押さえていた俺の手に触れた。

…………。

誰に言われるまでもなく俺と相良先輩は視線を合わせた。

相良先輩無表情だよ。

俺は……またドキドキし始めたぞ。

『お二人さん、それ以上はよそでやってくれない?先生恥ずかしい』

潤子先生のおかげで俺と相良先輩は我に返った。

『……すいません、手当たりましたね』

『大丈夫』

平静を装うかのように再び宿題を始めた。

『俺帰って寝ます。さよなら』

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