瞳の向こうへ
二人きりになりました。

部屋を見渡してるけど、寂しいなあ。

テレビの横に置いてあるのは寄せ書きね。

「それ、書いてくれたのは嬉しかったですけど、クラスの誰一人来ません。夏休みですから仕方がないですけど」

加奈子ちゃんが起き上がろうとしたので、慌てて彼女を支えた。

「彼は甲子園でまた投げるんですね」

「そうね」

「案外気の強い心持ってるなあって」

「加奈子ちゃんの前ではそうではなかった?」

「私の前では甘えてましたよ。私こう見えてもきついんですよ?」

「そうなの?絶対見えないよ〜」

お世辞じゃないよ。おっとりした雰囲気を十分に振りまいてるのに。

加奈子ちゃんの隣に座った。

ラベンダーっぽい匂いがする。

年下だけど、侮れんな。

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