瞳の向こうへ
今でも思い出したくない。

「最初に刺されたのが私です」

「え……」

黙ってしまうよね。

被害者の一人とお話してるんだから。

「びっくりしますよね?いきなりでしたから」

「……どうなったの?」

「歩道橋で始まったんですけど、翔が犯人と揉み合いになって、勢いで私たち三人階段から転げ落ちたんです。後はチラッとしか見てませんが、犯人と揉み合ってお互い殴り合って、翔が私のところまで来てくれたことまでは覚えてます」

「偉いね翔君は」

「翔が悪いわけでもないのに、自分が私を守れなかったせいだと。俺は今まで誰も守れない。きっと一人でいなきゃいけない人間なんだと手話で伝えて私の前からいなくなりました。その直後意識を失いました」

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