瞳の向こうへ
信号が変わった瞬間、私はダッシュで宿舎に入りました。

「あ!」

「あ!今日の開会式出た人だ!」

ロビーに青柳君と尚太君が立ってスマホをいじってました。

「どうした?引きこもり生活じゃなかったのか?」

ジャージ姿の青柳君が不思議そうに私に聞いた。

「今日くらいならいいだろって来ましたよ。開会式甲子園で観てたよ。尚太君どうしてニヤニヤしてーー」

「あー、わー、」

私の言葉を途中でさえぎった。

「尚太がどうしたって?」

青柳君は怪訝そうに尚太君の方へ振り向く。

尚太君はなぜか顔がひきつってて首を横に振り続けてた。

……そういうことか……。

フルーツタルトのおかげでめっちゃ勘が冴えまくりですよ。

「今日の尚太君は、いつにも増して真面目過ぎて真剣な顔してるもん。ニヤニヤして見ちゃった」

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