瞳の向こうへ
二人くっつきながら私にとっては新しい三年生の教室に入った。


メンバーはそれほどかわっていない。


あんまり進級した実感がわかないなあ。


「葵、おはよう」


教壇に男子数人が集まって喋っていた。


その中の一人。クラス委員長の刈谷尚太(かりやしょうた)君が声をかけてきてくれた。


「おはよう」


「大丈夫か?」


「風邪はこの人にうつす予定だから」


彩佳の頬を突っついて笑ってやった。


「あ〜、やだやだ。早く逃げま〜す」


彩佳は他の女子たちに声をかけながら後ろの席へ向かった。


「葵の席はここだぞ」


尚太君が手前の席を指差してる……。


こうなるなら、無理にでも昨日行くべきだった。


「でも、珍しいね。いつもこの時間はいないのに」


「こいつさ、朝から俺たちのとこ電話かけまくってどうしたらいいかって聞いてきたんだよ。クラス委員長でそんな大げさになるなよって」


尚太君の幼なじみ青柳快(あおやぎかい)君がため息交じりに言った。


確かに青柳君のおっしゃるとおりです。


「しょうがねえだろ。こんなのには慣れてねえんだから」


「ったく、だからそのうちお前に出番回ってくるから生田と葵の仕事ぶりを参考にしとけって俺たちがどれだけお前に言ったのに」


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