瞳の向こうへ
唯に促されて壇上に上がる。えっと……、しょうじ君ね。


さすがに壇上に上がると、ポーカーフェイスから一転、落ち着きがない。


無理もないよね。音のない世界に生きてるから。


「えー、みんなにここで知っておきたいんですが、彼とのコミュニケーションは手話でやらなければいけません。それ以外は普通の生活が出来ます。みんなとお弁当食べたり、運動したり、勉強だって出来ます。私から彼の自己紹介をやりたいんですが、私は手話が全く出来ませんので、この学校の手話同好会会長の相良葵さんの力を借りて彼の自己紹介をしたいと思います。では、相良さん。どうぞ」


唯の名司会ぶりに惚れ惚れしながら壇上に上がる。


上がった途端、今までお通夜みたいな雰囲気が一変し、拍手が沸き起こる。


「よ、人気者。さすが全国二位タイ」


「どうすればいいの?」


「わかんなーい」


「ちょっと……唯さん?」


「盛り上がればいいから。一応、一時間は集会だからまだ時間あるし」


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