瞳の向こうへ
『あとは、一年の時甲子園出たよ。途中までベンチだったけど』


『途中まで?』


『足折れちゃって、マネージャーと宿舎で二人だけの甲子園』


こいつ……、朝から手話でなんという……。


スピード早いからおそらく誰も理解してないのが救い。


『で、今度は相良さんだよ?ズバリ済んだ?』


どうする?乗るか?乗らないか?


とりあえず周囲を見渡す。


雨の音は聞こえてこない。


みんな食い入るように私たちのやりとりを見てる。


唯が口元を動かしてる。


たぶんだけど、おもしろいって言ってる。


……乗ってあげますか。


『やることはやったよ。もう何回も。お互いこれからよろしく』


満面の笑みを浮かべてるよ。


なんだ。笑えば凄いかわいいじゃん。


「最後までお付き合いしてくれてありがとうございます。彼の趣味は散歩のようです。女の子と毎日手をつないで歩きたいなあって。あとは、野球部に入るって宣言しましたので、野球部の方は是非とも歓迎をしてください。みんなへのメッセージとして、いろいろ教えてねだそうです。特に女の子のみなさんにです」


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