瞳の向こうへ
思わずため息をついちゃった。


病人が無理矢理テンション上げるといけません。


でも、テンション高い今のうちなら歩けそうだ。


勢いで起き上がった。


寒い……。


パジャマのポケットに手を突っ込んで階段を降りた。


「今日学校休むから」


リビングのソファーで新聞を読んでた父に向かってぶっきらぼうに言った。


「風邪早く直せよ」


「え?」


「さっき通りすがりに聞いた」


「あ、そう」


「それと、お前の顔みりゃ大体わかる」


「あ、そう……」


取り乱すことなく平然と新聞読んでる我が家のお父様。


今日はいつになく新聞とにらめっこ。


「お姉、スマホは?」


学生服着替えながら手を差し出す我が弟の相良廉(さがられん)


「廉、あんた自分の持ってるでしょ?」


「え?機械音痴のお姉様に教えてあげようかなって思ったのに」


「結構です。早く食べてよ。今日は留守番だから」


「昨日も言ったが、葵にスマホはまだなあ」


「そうそう」


痛いとこついて同調する男二人。


風邪ひいてなかったら二人に蹴りいれてるのに。


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