瞳の向こうへ
試合は投手戦。

息を呑む展開とはこういうことなんだ。

八回裏。

先頭バッターが四球。

ノーアウトのランナーが出るも後続が倒れてツーアウト。

バッターは翔君。

「頼む……頼む!」

廉はテレビを直視出来ません。

私は意地でもこの目に焼きつきますよ。

彼の歩みを見届ける責務があるから。

翔君はフルスイング。

場内大歓声。

実況の人も声を枯らして絶叫。

ボールは弧を描いてレフトスタンドへ。

でも、ファールになりそうな怪しい打球。

「うわ〜!いけ!いけ!」

廉はテレビを見ないで叫んでる。

お願い!入って……。

ボールは……レフトのポールに当たった。

入った……。

廉と歓喜のハイタッチ。

ベースを全力疾走で駆け抜ける翔君は誰よりも大きいよ。

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