瞳の向こうへ
放課後、私はカウンセラー室へと足を運んだ。


保健室とドア一つでつながっているから、風邪気味の子もよく来ちゃう。


「今日はお疲れ様。さすがね」


カウンセラー室の主、川崎潤子(かわさきじゅんこ)先生からべた褒めされた。


淡いピンクの遮光カーテンを開けると、日差しが部屋中を覆う。


カウンセラー室は意外と質素。


テーブル一つに小さいソファーが三つ。


その一つに潤子先生がパソコン操作をしながら座ってる。


「疲れてはないですけど、彼とのやりとりわかりませんよね?」


「え?ぜーんぜんわからなかったよ。葵ちゃんがもう大人の女の子以外はね」


「…………わかってますよね……」


さすがこの学校で手話が出来る唯一の先生。


まだ覚えてる最中だけど、こんなネタはしっかり理解してるんですね。


「まあまあ気にしないの。女の子は経験があってナンボのもんよ」


にやりと微笑み潤子先生は窓を全開にした。


< 31 / 325 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop