瞳の向こうへ
「どうやらピッチャーみたいです。ハハハ……」


白いハンカチで額の汗を拭きながら葵ちゃんがそう答えた。


ふいに、真緒ちゃんと目が合う。


お互い凍りついてる。


「どうしたんですか?二人とも見つめ合って。あ!そっち系ですかお二人。なら私はお邪魔かなあ」


「葵ちゃん、違いますから。何?彼はピッチャーなの?」


「葵さん、大丈夫なんですか?」


「え?何が?彼向こうでエースナンバーつけて試合バリバリ出たんだって」


呑気な葵ちゃんにたまにイラっとくるけど、私もいい大人。抑えろ〜。


「それはいいけど……」


「みんな心配性だ〜。大丈夫ですよ。向こうでそれなりにやって来たんですから〜」


どこからそんな確信を持てるのかわからない。


下手したら、責任はキャプテンなんだから。


「あ〜、今日はもう帰ります。あ!来週頭に例のやつ始めるので、お付き合いお願いします。真緒もね」


「はい。わかりました」


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