瞳の向こうへ
でも、スマホに関しては素人。


ましてや、携帯電話会社で働いてる父にかなうはずもない。


昨日、父のスマホ操作をちらほらと観察したけど、もう言葉になりません。


「もう五年ぐらいしたら、葵のようなアナログ人間にも優しいスマホが出来るから」


得意気な笑みを浮かべ見せつけるようにスマホを操作してた。


「そうそう。お姉、今日休むって母ちゃんに伝えて」


ふいにお互いの視線がぶつかる。


三人のたわいもない会話の最中に朝食が出来上がってた。


「廉、任せたわ」


「お、俺?風邪引いてるのあなたでしょ?」


「風邪引いてるから身体が動きません。あなただってそれなりにやれるでしょう。さ、早く!お母さん見てる」


「もう!風邪のバカヤロ ー」


なんだかんだ言いながら最後は絶対服従の廉がかわいいんだよね。


昔からそう。なんだかんだで私に気を遣ってくれてる。


本人はムキになって否定するけど。


「えっと…」


ぎこちない手の動き。


ちょっと間をおいて母も両手を動かす。


『家で寝てなさい。火の始末しっかりね』


「だってさ」


「わかりましたって」


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