瞳の向こうへ
最後まで廉に押し付けてしまいました。


ご覧のとおり、母との会話は基本手話でやってる。


物心ついた頃はきちんと口で会話が出来てた。


母のおはようも。


おやすみも。


喜んだり。


怒ったり。


悲しんだり。


みんなこの耳で母の声を聞いてきたよ。


でも、今では母の両手が、指先が母の声代わり。


いまではもう習慣で慣れっこだけど、初めの頃はいろいろ大変。


特に廉は手話がなかなか覚えられずかなりイライラしてたけど、母の前では感情を押し殺してた。


私と父は、地域のイベントで週に一度手話教室があったのでそれに参加してたから苦労はあまり感じなかった。


私は父に誘われたときは行かないって一回断ったけど、こっそり一人で様子を見に行ったら、私が片想いしてた男の子が参加してたのを見ちゃって即参加しちゃった。


好きな人と間近で何かを覚えるのはホントに効果があって、一ヶ月経たないうちにレベルは上級者並みに上達したよ。


その後の進展は何もなかったよ。


その男の子は転校して私の前からいなくなっちゃった。


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