瞳の向こうへ
「おばさん!ありがとうございます!」


おばさんの澄みきった瞳を目の当たりにしたら無理ですって絶対言えない。


でも、ちょっと嬉しい。


母は別に悪いことしてないのに、どこか近付きたくないような雰囲気ばっかり親戚のひとたちはみんな出してた。


一人でも母と距離を近付く人は大歓迎。


「やっぱり最初覚えたのってこれね」


自信満々に手話を披露するおばさん。


点滴してること忘れないで〜。


『野球観たい』


いかにもおばさんらしい。


『早く治ってください』


『手話早い〜。もう少しゆっくりゆっくり』


きちんと返してるではないですか。


このままずっといてもらって完璧にマスターしてもらいたいなあ。

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