一途な僕から鈍感な君へ




下駄箱から離れ、三井の背中を眺めながら歩く。



下校時間とあり、帰る生徒とすれ違うが、その度に皆が見るのは三井だ。

「三井君、バイバイ」なんて声を掛ける生徒も居れば、声を掛けないで見つめているだけの生徒も居る。

しかし、皆同じ様な目……憧れの者を見る目だ。



私は、三井がどんなバンドでどんなボーカルなのか、どんな奴なのか良く知らない。


何故彼が私に声を掛けるのか分からない。



何故彼は私を『青木』じゃなくて『花菜』と呼ぶのかも分からない。




ゲームやアニメには、必ず設定や目的がある。
少なからず結末をちらつかせるのだ。

だが、これは現実。
三次元。




答えが全く見えなくて、私は三井に対して『何故』という言葉ばかりがちらつく。





 
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