一途な僕から鈍感な君へ
「ねっ…ねえ、翼君こっちに来るよ!」
「借り物、なんだったんだろ!?キャー!こっち来る!」
そんな声は、本来なら内野となるだろうが、私の本場はこの会合。
私にとっては向こうが外野なんだ。
そんな外野の声をBGMに「マナ様は…」と声を上げたところで、
ぐっと腕を掴まれ引っ張られる。
「ひいいいいい!?」
身体が傾いて倒れそうになるが、足を動かしてバランスを取る。
そのまま引っ張る力は弱まらず、私は引っ張られるがままその場からグラウンドへ出た。
私の腕を掴んでいるのは、さっきチラリと見た三井翼で…
突然の事に頭が回らない私は、ただ彼の大きな背中を眺めていた。
2人分の走る音以外が、この世から消えたような錯覚。