神隠しの杜
一輪の彼岸花はいつも空と人間を見ていた。ころころ表情を変えたりするのが面白くて、空のようになりたいとか人間に憧れたりもした。
彼岸花は考えたり想像したりするのが好きで、大半の一日をそんな風に過ごす。
神様が唯一与えてくれた自由だと彼岸花は思う。神様はいるんだ、と心から信じてやまなかった。そう思うのは、人間が神様を信仰している姿を見て感化されたからであるが。
彼岸花は、他の彼岸花と目を共有していて自分以外の彼岸花が見たものを見れるから、それに関しては便利だった。
『いいな、人間って。僕は一ヵ所の場所から動けないからな……』
彼岸花がそんな事を寂しそうに思った時だった。
黄昏に染まる中、遠くから誰かがお社に走ってくるのが見えた。
見る限りまだ若い二人の少年で、どうやら競争をしているらしい。黒髪の少年の方が一足早く、お社の屋根に軽々と飛び乗る。
太陽のように暖かい眩しい笑顔を向ければ、焦げ茶の髪の少年が悔しそうに呻く。
彼岸花は考えたり想像したりするのが好きで、大半の一日をそんな風に過ごす。
神様が唯一与えてくれた自由だと彼岸花は思う。神様はいるんだ、と心から信じてやまなかった。そう思うのは、人間が神様を信仰している姿を見て感化されたからであるが。
彼岸花は、他の彼岸花と目を共有していて自分以外の彼岸花が見たものを見れるから、それに関しては便利だった。
『いいな、人間って。僕は一ヵ所の場所から動けないからな……』
彼岸花がそんな事を寂しそうに思った時だった。
黄昏に染まる中、遠くから誰かがお社に走ってくるのが見えた。
見る限りまだ若い二人の少年で、どうやら競争をしているらしい。黒髪の少年の方が一足早く、お社の屋根に軽々と飛び乗る。
太陽のように暖かい眩しい笑顔を向ければ、焦げ茶の髪の少年が悔しそうに呻く。