神隠しの杜
思い浮かべるのは、二度と戻れない楽しかった頃。



今となっては残酷で美しい思い出。人はどうして二度と戻らないものを、最悪な状況で追い求めてしまうのだろう。



春。



初めて会ったのは中学の入学式。歩はかっこいい部類に入るのに友好的な空気は一切なく、雪芭は雪芭で涼しげな美少年ではあったが入学式当初からすでに女子に囲まれていた。隼政はそんな二人に興味を持ち、そこからいつの間にか三人の関係が始まった。



花見。隼政が仲を深めるためにはお互いをよく知らなければいけない、と熱く友人論を語った事が原因となり近くの公園で花見を開き、歩の趣味でもある家庭菜園でとれた野菜で作った弁当が好評で、あの雪芭が珍しくがっついていた。



夏休み。



アウトドア系でもない歩たちは、たいてい図書館と三人のうちの誰かの家でオカルト談義を繰り広げている。歩に至ってはオカルトに興味がなく趣味の家庭菜園の本をいつも読んでいたが。



アイスはあずきばーがいいとかサイダー味がいいとか。歩は別にこだわりはなく、いつも余ったのでいいと言っていた。



小さな花火大会の花火を男三人夢中で観賞した。今のは大きかったとか、今度の方が大きいとか、歩と隼政はよく言い争っていた横で雪芭は呆れていた。



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