神隠しの杜
これも幻影なのか。



雪芭が黙っていると雨芭が口を開いた。



「ごめんな、助けてやれなくて。ずっと気がかりだった……結局、お前を助けてやれず死んで悪かった」

「本当に……雨芭、なのか?」

「ひどいな、信じてくれないのか?俺たち兄弟じゃないか。……まあ、本当の兄弟ではなかったけど」

「…………本当の兄弟じゃない?」

「全部思い出したんだ。でも、そんなの関係なく俺にとっては、ずっと可愛いたった一人の弟だよ」



信じられない事を言われてシヨックだったのに、雨芭の言った言葉が嬉しくて泣いてしまった。



雨芭がぎょっとして雪芭を抱きしめる。泣いていると必ずこうしてくれたのを思い出し、そっと微笑む。



大切な優しい思い出。



「雨芭……オレ、謝りたいんだ。許されない事をして、もう……あの頃みたいに戻れなかったとしても……このままは嫌なんだ」

「そうか。大丈夫だよ雪芭……俺も一緒に謝るし、また前みたいな関係に戻れるよ」

「……そう、かな?」

「そうだよ。だから、もう泣くな。やっと……お前と出会えて、神隠しから解放されたんだから。もう、自由なんだよ俺たちは。そろそろ行くか?」

「…………うん」



雪芭から優しい笑みが零れ落ちた。



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