神隠しの杜
耳を両手で塞ぎ夕羅は狂ったように叫ぶ。



「聞きたくない聞きたくない聞きたくない聞きたくない聞きたくない聞きたくない聞きたくない聞きたくない聞きたくない聞きたくない!!!」



兄様は優しいから、兄様は絶対裏切ったりしない…………



もう花などいらないから、早く兄様に会って、この悪夢のような嘘を――壊したい。



夕羅を冷ややかに見つめていた神は、三日月のように唇の両端を吊り上げ笑う。



「じゃあ、行きなよ?約束の花やるから」



神の手から花が現れる。



どこから――という疑問は思い浮かばなかった。もう、不思議とも何とも思わずただ、目の前の出来事を否定する意味もない。



神から花を奪い取るように掴むと、神が指差す方へ一目散に駆け出す。



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