神隠しの杜
闇から抜け出した先に繋がっていたのは、兄様が入院している病院。



受付で兄様がいる病室の番号を聞き、流行る心を押さえ廊下を走る。



「ちょっと!廊下を走らないでください!」



看護婦さんの注意する声も聞かずひたすら走った。



人の横を通りすぎる度視線を感じたが、今はそんな事どうでもいい。



もうすぐ、もうすぐ、大好きな兄様に会える――……



それはとても幸せな感覚で、いつまでも続けばいいと思えるほどの幸福感だった。



やっとの思いで見えてきた病室に、嬉しくなって走るスピードがアップする。



不思議だ、この時どうして息切れや疲れを感じないのか。



病室に駆け込み名を呼ぶ。



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