神隠しの杜
神隠しに遭った少年



「……今、なんて言ったんだよゆっきー」



 隼政は思わず受話器を落としそうになったが、間一髪落とさずに済んだ。何気なくいつものようにオカルト本を読んでいて、電話に出たまではよかった。


 相手は雪芭。――ここまではよくある話だ。しかし問題はその“内容”。



 受話器の向こう側で、雪芭が冷静な口調で繰り返す。



「歩、家に帰ってないらしい。さっき、菜々子さんから電話があった」

「こっちにはなかったけどなあ、電話」

「気が動転してるんだと思う。……これをどうみる?」



 隼政も雪芭も考えている事は同じだった。


 普通ならありえない話。


 しかし、今一番しっくりくるもの。



 けれどそれは悪夢でしかなくて、違っててほしかった。


< 17 / 164 >

この作品をシェア

pagetop