神隠しの杜
 見通しがいい場所なのに、民家ひとつ見当たらない。あるのは夕闇と、その背景にぴったり当てはまる彼岸花だけ。



 こうも静まり返っていると頭を過るのはあの事だった。



 神隠し―――



 人が忽然と消える現象。それを人は神様の仕業だと考えたと――隼政が無理やり預けてきたオカルトの本で見覚えがある。別に貸してくれと頼んだわけでもないのに、半ば強引に押しつけていったせいで、読まずに済ませるわけにはいかなかったのだ。



 だとしたら、やっぱりこれは神様の仕業かもしれない。



 そう結論づけたところで、何がどうなるわけでもなく――ただの気休めに過ぎない。



 今朝テレビで見た占いでは大吉だったのに。



 今日が、人生で一番最悪な日になった。



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