神隠しの杜
 夕羅が隣にいない事に、何故かひどく安堵した。しかしその理由を今考える必要はない――歩は緋葉に聞いてみる事にした。まずは、この状況を理解しなければ。



「どういう意味だ?」

「今から話す。夕羅は今ここにはいない。――オレが拒絶してる間は。ごくわずかだが、隙ができる」

「隙?」

「ああ。……オレはもう、どのみちヒトには戻れない。だからお前を助けてやりたい」

「……え?」


 緋葉は寂しそうに笑った。希望すらないその中で。それでもはっきりと告げた、迷いのないその瞳で、真実を。

 



「オレは神隠しだ」





 これは真実?




 あまりの現実味の無さに歩は、ただ虚ろな目で見つめるだけだった。いや、それだけしかできなかった。



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