神隠しの杜
「はい」

「ちょっとなんで出ないのよ!?」

「いや、バイト中ですし」

「バイトしてる場合じゃない事態が起きたっていっても――?」



雨芭は血の気が引いていくのを感じた。



水露のそれを聞いた瞬間、それが何なのかわかってしまった。



通話終了のボタンを押すと、無我夢中で走り出す。足が勝手に動いた、まるで一秒でも早く目的地にたどり着け、とでも言うかのように。






どうして一瞬でも、あの悪夢を忘れてしまったのだろう。






油断大敵。






隠れの町にいるのなら、絶対油断してはいけなかった。






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